リコ・キューン(キューン)

キューン氏がハンドメイドで作り上げる旧東独のホルン工房「リコ・キューン」。
1本1本を丁寧に作り上げる「キューン」のホルンは高い評価を受けています。

メーカー概要「Ricco Kühn

Ricco Kühn(リコ キューン)は、旧東ドイツの管楽器メーカーです。

ドイツはザクセン州の南部、チェコとの国境沿いにエルツゲビルゲという山地があります。 そのエルツゲビルゲの一都市がフライベルクで、人口は4万6千人。ドレスデンから在来線で50分です。 エーデランという街はフライベルクからケムニッツの方向に向って30分ぐらいいったところにあります。 そこにリコキューンの工房があります。(参考:ドイツ観光局

リコキューンは戦前の伝統的なハンドメイドホルン「ライスマンホルン」の技術を受け継いだKuhn氏の工房で、 ドレスデン国立歌劇場の奏者を中心に世界で愛用されています。 現在はホルンだけにとどまらずトランペットなども優れた製品を供給しています。

リコキューンの楽器は国内に入荷されている本数が少なく、 アレキサンダーやハンスホイヤー、ホルトンやコーンに比べれば知名度は低いのが現状のようです。 所有している人の中には、それがどこの国のメーカーで、 どのような楽器なのか知らずに使っている人も少なくないでしょう。

リコ・キューン ラインナップ(生産終了品も含む)

F/Bb フルダブルホルン model W293/W294「ライスマン」(W294はAストップキー付きモデル)

◆製造方法上の特徴

1999年にネロ楽器にて新品で購入。購入後にラッカー処理(さくらさん)。

W293「ライスマン」モデル。ブロンズ(さくらさん)。

W293は「the bell is made from one piece, with hand-hammered technology」とあるように、ベルが1枚の金属をハンドハンマー(機械仕上げではなく手で)で仕上げてあるのが最大の特徴です。

1枚の金属を丁寧に叩き上げることでベル厚が薄く、また金属の密度が高まるため非常に硬くなります。これが音色に大きな影響を与え、いい音で遠鳴りすると言われています。

ちなみに、ヤマハなどの量産メーカーはベルリングまでは1本の筒を徐々に広げて作り、ベルはベルで一枚の金属円をヘラ絞り加工を行って仕上げます。古典的な製造方法とはかなり異なります。

参照:ホルンの工場見学 ホルン いろいろな楽器を知ろう(YAMAHA)

また刻印も「REISSMANN」の文字が誇らしげです。

レバーの形が古風で美しいのが特徴です。

W293「ライスマン」少し前の形のW293モデル「ライスマン」です。(miwaさん)

ぶんさんのW293。2001年に山野楽器ウインドクルーにて購入。 仕様は、ブロンズ ハーフクランツ ベルカット ノーラッカー(購入後にラッカー処理)

 

 

 

 

 

 

◆マウスピースを選ぶ時のポイント

W293のマウスパイプは「In connection with the somewhat narrower mouth pipe」とあるように、クノッフ、クルスペ、メンニッヒなど東独タイプの楽器と同様に細くなっています(いわゆる「アメリカンシャンク」)。またテーパーの角度も微妙に違うので、ティルツなどのヨーロッパタイプのマウスピースは合わず、刺さりが不安定になることがあります。そこで、まず試してみたいのが同じ東独エリアのマウスピース工房であるW.C.シュミットのマウスピースです。

新品の輝きが美しいですね。

W293「ライスマン」(しすたーさん)

また、東独の楽器は、歴史を辿るとアメリカのホルンに繋がっています。具体的なブランドで言うと「コーン」「ホルトン」などに受け継がれています。ですから、マウスピースも「ストーク」などアメリカのメーカーでアメリカンシャンクのマウスピースを探すことが一つの解決方法になるかもしれません。もちろん西独系のメーカーでもアメリカンシャンクをラインナップしているメーカーもありますから、それを探すのもよいでしょう。

現状で、もっともリコキューンに適していると感じたのは、W.C.シュミット、それからPAXMANオリジナル(PHCではなく)のものです。シャンクが合わない場合は削ってしまうか、アダプターを製作して使います。私はアダプターを作って使用しています。

W2931「オールドライスマン」モデル

リコキューンは、このアングルが特に美しいと思うのですが、いかがでしょうか。。

ベルカットモデル。とても美しいですね。

たれぷーさんの所有する、オールドライスマンモデル。貴重なモデルなので、同じモデルの所有者が見つかると嬉しいです。

そもそも、オールドライスマンモデルは、ブヤノフスキーが使っていたライスマンホルンの形を復元したものだと聞いたことがあります。ブヤノフスキーのCDジャケットを見ると、まさにこの巻き方のホルンを手にしているのが分かります。

以下はたれぷーさんのコメント。

中古で手に入れました、オールドライスマンモデル。W2931 ノーラッカー、95年製らしいです。マウスピースは、20本近く試してみましたがいまのところ、STORK CA8 がハマっているようです。余談ですが、ヤマハの667Dのベルをはめてみたら、ぴったりでした。

W2931「オールドライスマン」モデル

F管の独特の形状はゲシュトップ管のため?とも思いました。

裏面からのカット。

miwaさんの所有する、オールドライスマンモデル、ゲシュトップ管付き。2931は抜き差し管まですべて赤(ゴールドブラス?)。マウスパイプだけ洋白につけかえています。

マウスパイプを交換したのは体力面?などできつくなったからだということですが、マウスパイプを交換したことで、音の立ち上がりが良くなって、吹きやすくなったそうです。

 

W2931「オールドライスマン」モデル(管理人所有)

全景。ワンピース・モデルです。

抜差管のアップ。総イエローブラス製。管理人が所有。

管理人が所有していた1994年製のW2931。ワンオーナーでほとんどケースに入ったままだったとのこと。15年選手にかかわらずロータリーの機密性も充分で、部品の劣化もほとんどありませんでした。現在は兵庫の新たな持ち主の元で第3の生活を送っています。

1番管の上部から斜めに出ているF管は、通常F管は楽器の前面を通っているのですが、このモデル(クノッフ・タイプ)は構えたときの身体側(マウスパイプ側)を通っています。これは、かつての「ライスマンホルン(ブヤノフスキーが使っていた)」の巻き方を再現したモデルだとのことです。

このほかの特徴としては、総イエローブラス製であることが挙げられます。通常、マウスパイプにはレッドブラス、抜き差し管には洋白の素材を使うのですが、このモデルは全てイエローブラスでできています。かつて山野楽器がライスマンホルンを復刻する際に指定したのだそうです。レバーは1〜3番がボールジョイント式、4番がストリング。使用するマウスピースはかなり選びますが、管理人はW.C.Schmidtを使っています。高音域の音の幅が少し狭くなっているのかもしれません。この楽器の魅力はハイトーンです。しっかりコントロールされた吹き方をすれば、ガサガサしない美しい音で吹くことができます。

W2831 「エデラン」モデル


全景。ライスマンホルンをベースにしたレイアウトは美しいですね。。

ロゴ部のアップ。最近のロゴマークです。

ホームページを見た方が写真を送ってくださいました。2002年製の「エデラン」モデル。キューンが短期間だけ制作していたモデルです。ベルは2枚取りで、チューニングスライドの曲がり角度が若干異なりますが、ほとんどライスマンモデルと変わらない出来のモデルでした。

W283は短期間でラインナップから外れてしまったので、台数限られる珍しいモデルだと思います。キューンは新しい工房であり、各方面にチャレンジしているので、モデルの移り変わりが速いのです。どのモデルもキューンらしく考え抜かれた丁寧な造りで、そこもキューンの魅力の一つでもあります。

 

W233 「リコ・キューン」

後ろから(ねこばすさん)。

前から(ねこばすさん)

ゴールドブラス、ワンピース、ベルクランツ、ノーラッカー。F/Bの切り替えにロータリーを二つ使用している変わったモデルです。クノッフタイプの持つ「マウスパイプが長い」という特徴と、クルスペタイプの「ロータリーからベルまでの管が長い」という両方の特長を兼ね備えています。ねこばすさんの楽器の昔の写真はこちら(笑)。→その1(表)その2(裏)

最初は息の流れがスムーズすぎて抵抗がなく、吹きこなすのにかなり時間がかかりました。フォルテシモで吹いても近くで鳴る感覚は乏しいのですが、遠くで聴くとものすごく存在感のある音が出る楽器です。(ねこばすさん)

 

最近あまり見られないデザインです。

1996年に購入。彫刻からザクセンの文字が消えました。

とても美しい状態。

KTさんの「リコ・キューン」モデル。1996年に購入。Ricco Kühn社のロゴが従来のドイツ的な伝統的なロゴから現代風のロゴに変わったのは少し残念、とのこと。

 

 

W124(プロフェッショナル・シングル)

リコ・キューンのBシングルホルンは、多くの工房のBシングルホルンの中でも、ちゃんと使える数少ないBシングルでもあります。Bシングルというと、日本では中高の備品レベルの安価なモデルと思われることも多いのですが、白黒映像の時代のオーケストラの映像を見ると半分以上がBシングルホルンを使っていることが分かります。Bシングルホルンは、かつてプロの道具だったのです。

Bシングルホルンだからといって出せる音が限られる訳ではありません。確かに4バルブのモデルはF管でしか出すことができない低音域は出せませんが、Fナチュラル管のオプション品を装着したり、5バルブのモデルを使ったりします。

ベルクランツが厚めで迫力があります。

1996年頃に購入とのこと。

とても美しいBシングル(さくらさん)。

■さくらさんのW124 Bシングル・ホルン。

 

 

 

 

酸化した表面も、こうなれば美しいかも?。

ズィコフさん所有。

 

■ズィコフさんのリコキューンのBシングル「W124」。ノーラッカー、クランツ付き。Fナチュラル管付き。本来のリコ・キューンの音が鳴り響く、素晴らしい音色です。こんな楽器が作れるんですよね…。

 

 

彫刻。

ぴーさん所有。

■ぴーさんのリコキューンのBシングル「W124」。ぴーさんによると、小回りが効くようにキーが短くなっています。

 

 

 

キューンに発注したFナチュラル管を装着。

裏面。「八の字」になってます。

管理人所有。

■管理人のBシングル「W124」。1999年製。中古で入手しました。 ゲシュトップ管(As管)をキューンの工房に送って、Fナチュラル管を製作してもらいました。
とても美しい音の楽器です。 軽量で中々に大変な楽器で、楽器を吹くための十分な身体が無いと良い音は出ません。

 

W125(プロフェッショナル・シングル)

Fナチュラル管付き。

Mizukiさん所有。

■MizukiさんのBシングルホルン。

カタログによると、

・Fナチュラル管付きが「W125」
・ナチュラル管無しが「W124」

となっているようです。「希望によりゲシュトップ管、替え管としてのオープンF管、全F管に変えられるF替え管セットの注文も可能」とされています。Mizukiさんは7〜8年前に山野楽器で購入。イエローブラス、上昇管付き。後にナチュラルF管を特注。

A/Eストップ付き。

とびさん所有。

■とびさんのBシングルホルン。

リコキューンのBシングルホルン。 A/Eストップ、ナチュラルF、5ローター、赤MLベル。2000年頃の制作。ここで掲載されているモデルと異なる形状なのを見かけて連絡くださいました。マウスパイプのシャンクは加工されており、通常はメーニッヒシャンク(いわゆるアメリカンシャンク)であるところがアレキサンダーと同様のドイツシャンクになっています。

W125FS(Bシングル)

しみけんさん所有。

リコキューンのC上昇管付きBbシングルホルン。東京都のホルンアンサンブル団員の方が、下の宮崎県の方の楽器をここで見て、「同じのだ!」と驚いて投稿して下さいました。

ベルはクルスペの洋白ベルを取り寄せて装着しています。もともとのオリジナルはハーフクランツのベル。4番(Fナチュラル)の変え管でA管とゲシュトップ管、主抜き差し管に付け足すような形でA管の付け足し管が他にもあります。

 

たざきさん所有。

宮崎県のホルン吹き、たざきさんの楽器です。ベルにハーフクランツ。ノーラッカー、親指側のロータリーはC上昇管、小指側のロータリーは長い方でFナチュラル管(短い方でA管?)。

このC上昇管というのは、通常はこの管を息が通っており、レバーを押すことによってC管への流れが遮断され(つまり管が短くなり)、音が「上昇」するという仕組みです。ファで吹いていたのが、ソになるわけですね。管が短くなるので、音が軽やかに明るくなります。まるでディスカント管を吹いているような感触です。

現在、W15FSのモデルは生産停止で、上昇管のシステムはW125/Cに受け継がれています。

楽器のメンテナンスについて

リコキューンのモデルはノーラッカーのものが多いので、ここで簡単に表面の手入れ方法を紹介します。

ピカールやメタルポリッシュなどで研磨する時は、まず洗剤で油脂分を落としてからやると効果的です。その後、再び中性洗剤で研磨剤を完全に落とし、乾燥させます。もし ピカールやメタルポリッシュが残ったまま保管してしまうと、一気に酸化が進んで光沢が失われてしまうことがあります。

楽器を見てみたくなったら

キューンは国内では山野楽器が正規代理店になっています。興味がある方は新大久保のウィンドクルーに行ってみると多くのリコキューンを試奏できます。

キューンのホルンはハンドメイドですが、総じてレベルが高く、安心して楽器を選べる工房です。オーダーメイドも可能。「クランツ付き」「ウォーターキー無し」「ラッカー有」「ワンピース」など、要望に応じた製品を発注することもできます。ただし、このとき吹き比べはできません。

情報求む

リコキューンユーザーの方、お持ちの楽器の情報を頂けますと嬉しいです。可能なものは随時ここで紹介していきたいと思います。あなたのキューンをここで紹介してみませんか?メール掲示板にてご連絡をお待ちしております。

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使用者リスト

ユーザーリスト
お名前 model 材質・構造・オプション マウスピース
Mizuki さん W125
"Professional Single"
C上昇管付きBbシングル・Fナチュラル管・ゲシュトップ管付き・イエローブラス・ベルカット・ノーラッカー
さくら さん W124
"Professional Single"
Fナチュラル管・ベルクランツ・イエローブラス・ラッカー。1996年頃に購入。
ぴー さん W124
"Professional Single"
Fナチュラル管・ゲシュトップ管付き・イエローブラス・ベルカット・ノーラッカー ティルツT4
たざき さん W125FS C上昇管付きBbシングル・ノーラッカー・ハーフクランツ アレキサンダー8F
しみけん さん W125FS C上昇管付きBbシングル・ノーラッカー・ハーフクランツ
番頭@すずめのお宿 さん W103 "Kinderhorn" B♭シングル(Aストップ付き)
ねこばす さん W233
 "Ricco Kuhn"
ゴールドブラス・ワンピース・ベルクランツ・ノーラッカー アレキサンダー8F
wasabi さん W233
 "Ricco Kuhn"
イエローブラス・ノーラッカー・ワンピース・ベルクランツ(フル・彫刻)・アマドウォーターキー
wak さん W293/ML "Reissmann"
tonji さん W293 "Reißmann" ブロンズ、ベルカット、ノーラッカー、ハーフクランツ ヤマハカスタム31GP
ぶん さん W293 "Reißmann" ブロンズ、ベルカット、ノーラッカー(購入後ラッカー処理)、ハーフクランツ JK2BM
(JK2AM)
こまたまご さん W293 "Reissmann" ベルカット・ノーラッカー
しすたー さん W293 "Reißmann" ベルカット・ラッカー アレキサンダー8M
miwa さん W293 "Reißmann" イエローブラス・ワンピース・ノーラッカー JK2CK
さくら さん W293 "Reißmann" ブロンズ・ベルカット・ラッカー(後処理)
管理者 W2931/ML
 "Old Reißmann"
イエローブラス・ワンピース・ノーラッカー W.C.Schmidt 1B