楽器は毎日吹いていないと、段々と実力が低下していってしまいます。
しかしホルンを練習できる場所はあまり多くありません。
本コンテンツは2015年時点の情報を元に記述したものです。シダックスはカラオケ館に事業譲渡を行ったため削除しました。今後は更新していく予定はありますが、最新の対応状況については直接店舗等にお問い合わせください。(2024年5月追記)
毎日楽器を吹くことができた学生時代はともかく、社会人になると楽器を吹いて練習する時間も場所もなくなります。世の中にアマチュア音楽家は数多くいますが、十分な練習時間を確保できている人は限られています。毎週末の合奏の時しかホルン吹けない状況で、「楽器を取り出してすぐ合奏」「合奏中は出番まで何分も待つ」なんていうのが普通でしょう。しかし合奏は合奏であって個人練習の時間ではありません。個人練習の時間を確保できないと、スケールやエチュード等をさらったり、難しい所を丁寧にさらったり、自分の奏法を見直したりすることはできません。結局、現状を維持できればいい方で、実際には昔の貯金を使いながらだんだん吹けなくなっていく……という人は多いのではないでしょうか。
私が練習場所を考えることになったきっかけは、本番を目前にして突然スランプになり、音が出なくなったこと、普段からちゃんと練習し、社会人になったとしても上手くなっていきたいと思ったことです。でも、狭い東京では心置きなく金管楽器の音を出せる場所がありません。そこで色々と考えました。
いくつかの場所や方法は考え付きましたが、私の場合は個人練習には「カラオケボックス」が一番利用しやすいということが分かりました。毎週水曜日には定時であがって、勤務先近くのビッグエコーで1〜2時間ほど練習して帰ることにしました。音響はワンワンと響き、あまり良くないのですが、音量を気にせず吹けるのは良いことです。毎週水曜日に楽器を吹く習慣をつけたため、土曜日や日曜日の練習でも、調子のアップダウンがあまりなくなり、安定した演奏をできるようになりました。「自分のためだけの時間」を確保できるようになったのは大きいと思いました。
このほかにも色々な方法が考えられますが、いくつか整理してみたいと思います。
カラオケボックスは、都心在住のプレイヤーにとっては最も身近で、練習に使いやすい場所です。ただし音響がいまいち良いところが少ないので、繊細な人は調子を崩してしまうかもしれません。ただし、慣れてくれば大丈夫です。ホールの響きをイメージして練習したい人には不向きですが、基本的な練習をしながら自分の生音と向き合いたいときには適しています。
誰にも聞かれなくて良い、というカラオケボックスで練習することは良いことがあります。練習会場などで誰かが居ると、聴かせようとして余計な方向に意識が向いてしまい、無理に音を当てにいったり、ハイトーンを吹いてみたりしてしまいやすいものです。それが、狭い個室で自分ひとりなら、どんなに音を外そうが最低な音色を出そうが気にすることはありません。ダメな自分を知ることも大切です。
ただし、カラオケボックスは本来、何人かのグループで歌って楽しむ場所ですから、楽器の練習に対して協力的ではない店舗もあります。以下では大手カラオケボックス店の対応状況を紹介していきます。ただし、こうした状況もコロナ禍を経て大きく変わっていったようです。
Q:ビッグエコーのルームを楽器練習に利用しても構わないのでしょうか。
A:公序良俗に反しない範囲であれば楽器練習等にもご利用いただけます。万が一他のお客様からの苦情があった場合は、店舗の判断により、楽器のご利用を中止していただく場合もございます。(施設環境は楽器の種類によって利用できない場合あり)
Q:カラオケ以外の目的で利用はできますか?
A:はい、可能です。カラオケルームをテレワークスペースとしてご利用いただける他、ライブ鑑賞・大画面でのゲームプレイ・楽器の練習など様々な用途でのご利用が可能です。詳しい内容はご利用の店舗へお問い合わせください。
Q:楽器練習にカラ鉄を使用出来るの?
A:周囲お部屋のご迷惑にならない程度の音量でご利用頂けます。店舗・時間・曜日により、混雑が予想される日は楽器音等が他お客様へのご迷惑となる可能性がございますので、ご入室いただけない場合があります。予めご了承くださいませ。
Q:楽器の練習がしたいのですが…。
A:基本的に他のお客様の御迷惑となるような音を出さない程度の楽器の持ち込みに関しては、特に禁止をしておりませんが、部屋の機材(スピーカー・アンプなど)に繋いでの御演奏は御遠慮願っております。
Q:楽器を持ち込んでもいいのですか?
A:ラオケ利用の際と同等の音量であれば楽器の練習でのご使用は問題ございません。ただし、店舗の防音状況や他のお客様のご迷惑になるような場合はお断りさせていただくこともあります。
カラオケボックス業界はコロナ禍を経て大きく変わりました。少人数での利用も歓迎される傾向にあり、積極的にヒトカラや楽器練習を受け入れてくれる店舗も増えたように見えます。実際、大手チェーンでは、明確に楽器練習での利用を禁止しているところはありません。ただし、金曜日や休日、祝日など、店舗にとってのかきいれ時に、一人で長時間利用するのは断られることもあるため、避けた方が良いでしょう。
毎週通っているうちに顔なじみになり、部屋などで便宜を図ってくれることもありました。また、店員さんがオーケストラの演奏会に興味を持ち、私が出演する演奏会に足を運んでくれることもありました。このように、同じ場所に通うというのは、私達利用者にとっても、店舗にとってもメリットがあります。
大手チェーン以外でも、個人経営クラスのカラオケボックスの中には、ワンドリンク制もなく、格安で利用できるところがあります。通勤路や地元の商店街などで探してみるとよいでしょう。
なお、楽器練習での利用に当たっては、初めて利用する時にいきなり楽器を持ち込むのではなく、事前に足を運んで了解を得ておくとスムーズです。
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楽器店に併設されているレンタルスタジオや、独立系のスタジオを利用する方法があります。利用料も千差万別で、音響はカラオケボックスよりもはるかによい(当然ですが)のですが、一方で競争率が激しく、取りたい時間に取ることは難しいことが多いと思います。また、利用料金も少々お高めです。各地にはさまざまなスタジオが散らばっています。インターネットやクチコミなどから近所のスタジオを探してみましょう。意外と住宅街の中にぽつんとあったりします。
音響面や利用料金面で一番よいのが、区や市の会館など公共施設のスタジオです。時間あたりの利用料も安く、広さ・音響も十分です。ただし、利用時間の区分は「午前・午後・夜間」「2時間区切り」であったりするので、短時間での利用には向かないことがあります。競争は激しく、1カ月〜数カ月前からの予約が必要です。まずは、皆さんが住民票を置く地域の状況を調べてみましょう。23区で言えば、区内在住者や区内在勤者に対しては優先的に場所を確保できることが多いようです。せっかく税金払ってるんだから活用しましょう!
練習用ミュート(プラクティスミュート)や、サイレントブラスを利用して、自宅で練習する方法です。ミュートにもよりますが、話し声程度まで小さくなります。サイレントブラスでは電子的に音を増強して、まるでホールで響いているかのような音をヘッドホンから聴くことができます。
しかし、こうしたミュート系の使用には注意が必要です。ベルをミュートで塞いでいることにより、抵抗はミュートを装着していない普段よりも強くなり、息の量が少なくても響くように聞こえます。吹きやすく、音が出やすく感じられるので、その状況に慣れてしまうと、ホールなど広い場所で楽器を吹いた時に、音が小さすぎたり、音が出にくく感じられたりします。ミュートまたはサイレントブラスを使用した練習では、スタジオやホールで楽器を吹くこととは全く違う状態なのだということを知っておくことが大切です。
ヤマハのサイレントブラス・システムは、2013年11月に約10年ぶりにリニューアルされ、大幅に進化しました。管理人はヤマハ銀座店で試奏してからトランペット用を購入しましたが、大幅に軽量化され、しかも吹奏感はミュートなしの状態とそれほど変わらず、問題の音程も大幅に改善されていました。しかも音色がとても良いと感じました。例えば、コルネットとトランペットで使い分けた時に、しっかり音色が変化していたのです。ホルン用も音程、吹奏感ともにミュート無しの状態と遜色ありません。ヤマハによると、採音する場所や構造を工夫したのだそうです。
現在のサイレントブラスは、価格分の価値はあると思いますので、自宅で練習したい人で防音室を設置できない人、通えるカラオケボックスやスタジオが無い人などには特にオススメです。気になる価格ですが、都内の数店を見た限りでは、トランペット用で1万5000円〜1万6000円の設定価格が多かったので、ホルン用にしてもトランペット用にしても、Amazonで購入しても十分にお値打ちだと思います。購入しないまでも、ぜひ一度は試してみていただきたい製品ですね。
自動車は外からの騒音を防ぐ構造をしていますが、同時にある程度は中から発生する音を外に漏らさない構造にもなっています。ちょっと人家から離れてから自動車の中で楽器を吹けば、誰からも文句は言われることはないでしょう。移動式個室のようなものです。なお、車内は狭いので、楽器の出し入れには注意してください。
都心ではまず不可能な選択肢。多摩川の橋の下なら、昼間なら可能かもしれません。また上野公園などの広い公園では、しばしば楽器を練習する人を見かけることもあります。地方なら森林の中も有効でしょう。ホルンはドイツ語でWaldhorn(ヴァルトホルン:森のホルン)というくらいですから、森の中での演奏は経験しておくとよいと思います。
屋外での演奏は、音響がホールなどと全く違います。最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、広い場所での演奏は意識を遠くに向けさせてくれます。色々と新鮮で、発見があることでしょう。ぜひ一度は屋外での演奏・練習を体験してみてください。
屋外で楽器を吹く時の注意点はいくつかあります。
・楽器の取り扱い:屋外では落としたりぶつけたりすると、楽器が深刻なダメージを受けてしまいます。また、砂埃などのゴミ混入、急な雨による濡れにも注意してください。
・音響:反響がないため、自分でも気付かないうちに吹き過ぎてしまうことがあります。いつもと同じ吹き方を心掛けてください。
こうした注意点は逆に自分の音が聴こえない場所で演奏しなければならない場所に備えた練習にもなります。
マウスピースのみでの練習には賛否両論があると思います。正解は無く、「適切な方法で吹けば練習になる」ということに尽きます。私はもともとマウスピースのみで楽器を初めて悪い奏法を身に着けてしまい、矯正に大変苦労したため、反対派でした。しかし現在では練習に取り入れています。
調子を崩さないためのポイントはいくつかあり、「低音は吹かない」「口内圧力を感じながら吹く」というものです。ある程度楽器を演奏できるようになり、適切な指導を受けることができる環境であれば良いでしょう。一日の始めに楽器を取り出して楽器を吹く前に「マウスピースのみでしっかり圧をかけて息を流す」「結果として唇が効率よく振動する」という確認すると、その後の演奏もスムーズです。いずれにしても信頼できる演奏家のアドバイスを聞きましょう。
 
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